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雄大な自然と、独自の文化、いにしえの記憶にふれる

「やんばる」は「山原」と書き、沖縄本島北部にある山や森など手つかずの自然が多く残るエリアです。国内最大級の亜熱帯の森が広がり、天然記念物のヤンバルクイナや琉球固有種のヒメサザンカなど希少な動植物が多く生息することから、2016年には国立公園に指定されました。やんばるの森の大自然を存分に感じられるアクティビティと、紅型(びんがた)染め体験、地元の新鮮な食材を使った料理が、都会で疲れた頭と心を癒してくれます。やさしさに溢れたおきなわの”もの”と”こと”を五感で感じましょう。

9:00~12:00
やんばるの森が育む物語の世界へ

国立公園に指定されている「やんばる三村」のひとつ、大宜味村(おおぎみそん)で一番高いネクマチヂ岳。標高360.7メートルと決して高くはありませんが見所が多く、トレッキングにおすすめの山です。頂上を目指して「登る」よりも、美しい草花や動物たちを観察しながら「歩く」ことに向いています。

アップダウンのある岩場や、ぬかるんだ道もあるので、汚れてもいい服装と歩きやすい靴で出かけましょう。鞄は両手の空くリュックサックが便利。飲み物とタオル、帽子も用意してくださいね。トレッキング初心者の私たちは、地元のガイドさんを予約しました。経験豊富なガイドさんは、おすすめのルートを案内してくれるだけでなく、山の歩き方や歴史、動植物などについても教えてくれます。

【神秘のパワーあふれるスぺシャルな体験】

登り口近くにある展望台広場の駐車場でネイチャーガイドさんと待ち合わせです。ガイドさんは大宜味村でシークヮーサー農園を営みながら、ガイドとしても長年活躍しています。軽く準備運動をしてから、いよいよ出発!

ひとたび足を踏み入れると、そこは亜熱帯の植物が生い茂る森。本土とはひと味違う風景に圧倒されます。風の音や鳥の声に耳をかたむけて、森林浴を楽しみながらの散策。太陽の暖かさと、木々の緑や土の匂いを全身で感じます。心地よい空気を身体いっぱい吸い込んでみると清々しい気分に。自分も自然の一部になったつもりで楽しみます。

森へ入ってからすぐに、巨大なシダ植物のヒカゲヘゴの木を発見。キリンの首のように伸びて、大きな葉を広げています。さらに奥へ進むと絶滅危惧種のキノボリトカゲや、羽化したばかりの蝶・リュウキュウアサヒマダラも見つけました。小さな白い花のアリモリ草も可憐に咲いています。普段は気づかないような小さな命。健気でたくましくて、励まされました。

スタートしてから、約1時間ほどで標高329mの休憩所に到着です。この辺りは、県内に8カ所あるツバキの群生林のうちの3つがある県内屈指の場所。ちょうど琉球固有種のヒメサザンカが実をつけていました。するとガイドさんが落ちた実を石で割って昔ながらの椿油づくり。砕かれた実を手で擦り合わせるとたちまち艶がでてきて、紫外線カットもしてくれる天然のハンドクリームのできあがりです。後日談ですが、手を洗った後もしっとり感がしばらく持続していました。

休憩の後はいよいよ頂上へ。登ったかと思ったらすぐに下ったり、しばらくすると平地があったりと探検隊になった気分で進みます。休憩所から約15分でついに山頂へ到着!美しい海と空に囲まれた、やんばる三村の絶景が広がっています。北は辺戸岬(へどみさき)からオクマビーチ、西は伊平屋島(いへやじま)、南は古宇利島(こうりじま)、伊江島(いえじま)まで見渡すことができました。ここまで来るのに、急な斜面が続きますが、その疲れをいっぺんに忘れさせてくれる感動があります。日常とは違う充実のひととき。登ることの喜びをかみしめました。

少し身体を休ませて、ここからはどんどん山を下っていきます。その道中にも、2億数千年前の隆起した岩や、樹齢100年以上のシナモンの木、天然記念物のノグチゲラの巣穴を見ることができました。そして、最後のビューポイントは、手のひらのような7本の幹が伸びた巨木です。幹の間に入ってみると、母のお腹の中に包まれているような不思議な感覚に。神秘的な写真も撮影できました。

最後はスタート地点に戻って、トレッキング終了です。たくさんの非日常の出会いが待っていた、あっという間の3時間。心地よい汗を流しながら、自然と一体になれた感じがしました。人間も自然のサイクルの一部なのだと、やんばるの森が教えてくれたような気がします。

12:30~14:00
旬の畑をいただく農家レストラン

すっかりお腹をすかせた昼は、気になっていた「笑味(えみ)の店」へ。店主さんおすすめの「まかちぃくみそぅれランチ」を注文しました。‟まかちぃくみそぅれ”は沖縄の言葉で、‟おまかせください”という意味。管理栄養士でもある店主さんが、自分の畑で育てた野菜がふんだんに使われています。

その日に畑でとれた旬の野菜を使うので、料理の内容は季節ごとに少しずつ変化。自分の畑では足りない食材は、長寿の里で長年シークヮーサーやドラゴンフルーツを栽培されている農家さんから分けてもらうこともあるそうです。

「長寿の里」として有名な大宜味村。その土地でとれた食材を、そこで調理するとおいしさも倍増。南国の温暖な気候と、やさしい人たちに育てられたストレスのない食材たち。トレッキング後のエネルギー補給は、目にもカラダにもやさしい料理を楽しみました。

15:00~17:00
世界にひとつだけのオリジナル作品を

お腹も心も満足したら、ぐるっと東海岸にある東村まで、やんばるドライブを楽しみながら向かいます。訪れたのは、沖縄伝統工芸の紅型(びんがた)染め体験ができる「びんがたの染や」。森の中にひっそり佇む、小さな工房です。一日のおわりは静かに、沖縄の伝統文化を学びます。

15世紀頃に生まれ、琉球染色技術の起源とされる紅型。沖縄では、たくさんの色の総称を「びん」と呼ぶことと、「紅差型」「紅入色型」の略が合わさって、紅型と呼ぶようになったそうです。今回は、コースターの色さし体験と、ミニトートバッグの紅型染め体験に挑戦しました。

コースターの色さし体験は、紅型の最後の工程を気軽に体験することができます。ぬり絵の要領で色をつけていき、つい無言で集中してしまいました。ミニトートバッグの染め体験は本格的な工程で進みます。糊を流すまで、どんな仕上がりになるのか分からないのでわくわく。家に帰ってからのお楽しみです。

植物や動物など、自然の風景を沖縄の太陽のような鮮やかさで、紅型の中に描く。作品と向き合って、じっくり過ごす時間も、オンリーワンの紅型アイテムも自分へのご褒美です。奥深い魅力にあふれた、やんばるの自然と文化に学ぶ一日となりました。