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美ら海絶景を眺めつつオフロードを行く!『全日本ジュニアトレイルラン プレ大会 in 石垣島オーシャンビュートレイルラン&ウォーク』

去る2017年2月4日(土)、『石垣島オーシャンビュートレイルラン&ウォーク』(主催:全日本Jr.トレイルラン in 石垣島オーシャンビュー実行委員会)が、石垣市北部の平久保半島を舞台に開催されました。ラン5種目、ウォーク4種目の競技に、県内外から、そして僅かながらも国外からもエントリー。気温は最高24度・最低20度、雲天の中、時折晴れ間も見せつつのまずまずなコンディション。そんな中、計467人のラン&ウォークの参加者が、約8割が海岸沿いとなる絶景のオフロードで爽やかな汗を流しました。

昨年のモニターイベントを経てグレードアップした記念すべき第1回大会!

「トレイルラン」とは、舗装されていない登山道や林道のコースを疾走する新しいスポーツです。エコロジー的思考やライフスタイル、そして健康ブームの相乗効果もあり、近年全国的に人気急上昇中です。

この大会は日本初の”オーシャンビュー”を標榜し、また沖縄初となるミドルコースでもあるトレイルラン。2014年に沖縄本島で初めて行われたトレイルレース「国頭トレイルランニング大会」の兄弟大会という位置付けです。今回は2016年2月に実施されたモニターイベントを経て、更にグレードアップ! また全日本ジュニアトレイルランの「プレ大会」として、記念すべき第1回開催となりました。

競技は、ランが60km/32km/20km/12km/2.5km。ウォークが32km/20km/12km/6kmという、重層的な構成。トレイル率は約90%でありながら高低差53mと、トレイルランの大会としては平坦で走りやすいコース設定。ちなみに、「日本トレイルランニング協会」がトレイルレースの基準を「トレイル率75%以上」と打ち出す中、沖縄県内でこの値をクリアしているのは、先の国頭(90%)とこの大会(88%)しかありません。

スタート/フィニッシュとなるメイン会場には、石垣市伊原間の海岸に隣接する「伊原間公民館」。バリバリの本気アスリートが集う最も過酷なラン60kmに出場する選手は、早朝5:30から受付開始。

各自、朝ごはんで燃料補給したり、念入りの準備運動などをじっくり済ませ、スタートに備えます。まだまだ暗い中、緊張感漂うゲート前…。そして7:10! 号砲とともに、いよいよ始まりました!

スタート直後、生い茂る亜熱帯の植物の間わずか2~3mの隙間を抜けると、パっと広がる広大な太平洋。最初から勢い良く飛び出す人、仲間と笑顔で健闘を誓い合う人、スマホで朝焼けを撮影する人…。約85名の参加者が各々のペースで、北部に連なる美しい砂浜を走り出しました。

国内初のオーシャンビューのコースは石垣島北部ならでは!

舞台となった石垣島北東部の平久保半島は、伊原間を起点に北におよそ18km、細長く延びています。集落が点在し、道路が整備されているのは西側のみで、東側は延々と放牧場が広がっています。

序盤、伊原間の海岸沿いを1kmほど過ぎたところで、林道へ。いわゆるトレイルコースが始まります。

ガジュマルやモンパといった、亜熱帯特有の樹々に囲まれた薄暗い道なき道は、さながら獣道…。そして、なだらかな坂を登り切ると、唐突に広がる高台の大放牧地帯! 美ら海珊瑚礁をバックに馬や牛が悠々と草を食む姿は、本土は元より沖縄本島でも見られない、石垣島ならではの美しい光景。まるで、どこかの大陸のエッジを思わせるようなダイナミックな景観に、しばし心を奪われます。

所々で、八重山特有のどっしりとした黒毛和牛達が目前に迫ります。こういった光景も、この大会ならではの醍醐味です。

当然、車では入って来れないエリアに付き、地元石垣の参加者からも「初めて来た」、「こんな風になってるんだ!」などと言った声もちらほら。もちろん、黒い巨体をバックに記念撮影する人も多数。

そして、ラン60km部門、序盤のクライマックスは、何と言っても一周目の折り返し地点となる「平久保崎灯台」です。言わずと知れた、名うての観光名所である石垣島最北端。白亜の灯台を目印に、左手(西側)に東シナ海、右手に太平洋と、眼下にパノラマで広がる大海原は、雄大の一言…。序盤の疲れを吹き飛ばす見事な景観を前に、多くのランナーがスマホでパシャッ! 完走タイムなどお構いなしに、数分間見とれている人も少なくありませんでした。

平久保崎灯台の後は、西海岸の舗装された海沿いの道路を南下します。はるか西の海上には、時折、西表島など八重山の島々が姿を見せることも。東海岸とはまた異なる海の表情は、見ていて飽きることはありません。

地元のボランティアによるエイドや応援に支えられて…

60kmの部では計7箇所。要所に設けられたエイドステーションでは、ほとんど地域住民によるボランティアが対応。水やちょっとした食べ物も提供されました。
もちろん、通常のマラソン競技とは異なり、自然という舞台で繰り広げられるトレイルランニング。この大会でもエコや自然保護の啓発には徹底的にこだわっています。例えば、ゴミ削減のためにエイドでも紙コップの提供は一切無く、参加者は持参したペットボトルなどに水を補給するスタイルです。

また、進路や距離を示す目印は、漂着物や浮玉で作成。この微笑ましい手弁当感が、何とも言えず牧歌的♪ 八重山ならではの長閑な空気を色濃く反映しています。

コース序盤の赤石集落のエイドステーションでは、東北は福島より「桃の漬物」がふるまわれました。コリコリ感が癖になりそうな珍味に、ほおばる人は皆一様に舌鼓を打っていました。

ラン60kmの前半戦、西海岸の中ほど、久宇良集落のエイドステーションでも、地元ボランティアと談笑する人も。

久宇良を過ぎたら、ひたすら南下。スタート地点でもあった、伊原間公民館を折り返し後半戦へ。再び、海岸線を疾走します。

もちろん公民館では、ランの中距離コースやウォークなど、その他競技が時間差で随時スタート。常時、賑わいを見せていました。

完走証を受け取りお待ちかねの地元食材でお腹いっぱいのランチタイム!

そして、開始からおよそ5時間。いよいよラン60kmの1位がゴールイン!見事栄冠を勝ち取ったのは、長塚 淳さん(40/山形)。なんと昨年のモニターイベントでもトップでゴールした選手です。「想像以上に暑く、33km辺りで足がツってキツかったんですが、綺麗な海に癒されました」。と、まさに大会のメインテーマであるオーシャンビューに背中を押されたという一言が印象的でした。

そして、次々にゴールする各種競技の参加者たち。ラン60km、女子の1位は、普段はフルマラソンの大会で精力的に参加している野尻あずささん(富山/写真右)。2位はトライアスロン(ロング)で鍛えた健脚自慢の小林恵さん(山形)。「ちょっと転んじゃって血も出たんです(笑)。でも、やっぱり大会で良いところは、新しい知り合いができることですね」(野尻さん)と充実感と満足感でキラキラと輝いていました。「(トライアスロン用)自転車を持ち込んでいるので、数日間滞在して、『ヤエヤマヤシ群落』など、まだ行ったことない観光地を訪ねようと思います」(小林さん)と、こちらはまだまだ体力が有り余っていると言わんばかりに語ってくれました。

徳島からラン60kmに参加の男性(右)は、なんと年間10回以上も全国各地のマラソンにエントリー!「トレイルランは初めてでしたが、海はもちろん澄んだ空気や長閑な環境が最高ですね。昨日は野底マーペを登りました。観光も運動も楽しめて一石二鳥です!」と、大会に飽き足らず、石垣島全体を大層気に入られていました。

また、ウォーク部門では、県外からはもちろん、地元石垣島からも家族や職場仲間、友達同士での参加者が多数見受けられたのも、この大会の特色を表していました。

元気一杯爽やかな笑顔を見せてくれた5人組は、京都からご参加のお母さんグループ。「スポーツクラブに通うお友達です。いつも走っているランニングマシンとは大違い! とにかく、どこからでも海が本当に綺麗で、疲れを全然感じさせませんでした。とても楽しかったので、ぜひまた来年も参加したいです!」

ちなみに、参加者全員に配られた食券で地元ボランティア手作りの「マグロそば」と「伊原間チキンカレー」、2つのオリジナルメニューが提供。参加者は皆、充実した体験を振り返りつつ、思いおもいの時間を楽しんでいました。

光り輝くオーシャンビュー、八重山ならではの壮大な放牧地、そして手付かずの深遠な大自然に、地域の人々の暖かな応援…。どこか懐かしい石垣島北部ならではのロケーションを目一杯味わえる、素晴らしい大会はこうして幕を閉じました。

いかがでしたか? 県内屈指の観光地である石垣島ですが、車では決して行けないフィールドを、自分の身体で、見て聞いて、感じられる経験は、まさにこうしたスポーツイベントならではの醍醐味です。初めての方は一度でその魅力に引き込まれ、リピーター一直線!などということも珍しくありません。観光地巡りとはまた一味違った、自分だけの思い出いっぱいのスポーツツーリズム。これからの沖縄旅行の、新たな可能性を大いに感じさせてくれました。

何より今回は、来年同じく石垣島で開催を目指す全日本ジュニアトレイルランのプレ大会。ぜひ、来年、更に規模が大きくなる全日本大会のエントリー、心待ちにしております!