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世界自然遺産の森を走る”トレイルラン”に挑戦

登山やキャンプなどアウトドアを楽しむ人が増えている中、今新たなアクテビティとして人気が高まっているのが、通称「トレラン」と呼ばれるトレイルランニングです。舗装されたアスファルトの道を走るマラソンとは違い、未舗装の山道や登山道など自然の中を駆け抜けるので、爽快な気分が味わえ、非日常感も楽しめます。そんなトレイルランニングの魅力を体感できるのが国頭村です。

ヤンバルクイナやノグチゲラなど、「固有種・希少種」が数多く暮らしていることから、2021年7月には「生物多様性」が国際的に評価され、国頭村を含む沖縄本島北部(やんばる)は、奄美大島、徳之島、西表島とともに、国内5ヶ所目となる世界自然遺産に登録されました。

役場とプロがタッグを組んで誕生した「国頭トレイルランニング大会」

 「国頭トレイルランニング大会」のレースシーン。写真提供:三上一行

「国頭トレイルランニング大会」は、国頭村の観光PRもかねて、当時の村長が中心となり立ち上げました。希少な生き物が生息する亜熱帯の森を舞台にして行われる大会は、2014年の初開催から7回を数え、県内はもちろん、県外からの参加者も多く、約1,000人のランナーと600人のウォーカーがエントリーしています。

第1回目の大会から関わってきた国頭村役場の當山英雄さんは、「2007年に森林セラピー基地として認定され、村には癒しを求める人たちが県外からもたくさん訪れてくれるようになりましたが、自然を感じながら楽しめる新しいアクティビティを作りたいと考え、トレイルランニングに目を付けました。幸い森には、昔の人たちが使っていた古道が数多く残っていたこともあり、自然を壊さずコースを作ることができたのも大きかったですね」と懐かしそうに振り返ります。  現在は、コース作りに貢献したスポーツツーリズム沖縄代表の喜久里忍さんの協力を得て、トレイルランニングの間口を広めるため、新しい大会開催にも取り組んでいます。

左・スポーツツーリズム沖縄代表の喜久里忍さん、右・国頭村役場企画商工観光課係長の當山英雄さん

初心者でも楽しめる「やんばるトレイルラン in 国頭村」のコースを体験

来年、1月・2月に喜久里さんが中心となり開催する新大会の「やんばるトレイルラン in 国頭村」は、従来の「国頭トレイルランニング大会」の姉妹大会という位置づけで、初心者でも楽しめるようにと、整備された走りやすいコースになっています。そこで、沖縄のランニングクラブチーム「疾走天使」に所属し、県内外のマラソン大会にも多く出場している神村咲子さんに、実際のコースを体験してもらい、コースの魅力を教えていただきました。
朝10時。国頭森林公園のスタート地点に立った神村さんは、「普段からマラソン仲間とトレイルランを楽しんでいますが、国頭村の大会に出るのは初めてなので楽しみです」と声を弾ませます。

体験したのは実際にランナーが走るアップダウンを繰り返す8.6kmのコース。それでも、月に130キロほど走りこんでいるという神村さんは、急な斜面もなんのそのと、軽やかに駆け上っていきます。

登山道、木階段、湿地、岩場など、バラエティーに富んだ道があり、トレイルランニングの初心者には最適なコースといえます。やんばるの山々を一望できる高台もあれば、亜熱帯の森の中の斜面を降りると、ヘゴなど太古の原生林が生い茂るジャングルのような世界が広がっていたりと、風景の変化も楽しめます。

亜熱帯の森を駆け抜けるランニングも爽快ですが、周囲の生き物や植物を観察しながらウォーキングを楽しむのもおすすめ。幹を這い上がるキノボリトカゲや真っ黒な姿のシリケンイモリなど、世界自然遺産の森で暮らす希少な生き物との出会いも待っています。ただし、森で生息する多くの動植物は固有種・国内希少動植物種に指定されているので、採取しないように気を付けてください。

倒木をまたいだり、くぐったりするのも、トレランの楽しみのひとつ。
歩くのが気持ちいい、整備されたクロスカントリーコース。
折返し地点近くには、「天国の階段」と呼ばれる急登も。

2時間ほどで無事ゴールした神村さん。 「気候も涼しくて気持ち良かったですね。程よい感じのアップダウンがあって楽しめましたし、世界自然遺産の森を走るという貴重な経験もできました。コースは階段も多かったので、参加する人は、事前に階段を上り下りする練習をしておくと、脚への負担が軽くなると思います。今回は、ウェアを脱いだり、羽織ったりするレイヤリング(重ね着)で体温を調整する練習もできたので良かったです。冬は気候が変化しやすいので体温の調整がしやすい服を着て行くことをおすすめします。1月の大会が今から楽しみです」

トレイルランの後は、道の駅で地元の食材を堪能

コースを走り終えた後は、車で5分ほどの場所にある道の駅「ゆいゆい国頭」に移動して、国頭村の特産物を使った料理に舌鼓。今回神村さんが選んだのは、地元の農家がイノシシと豚をかけ合わせて育てた「イノブタ」を使ったイノブタ汁。「冷えた体が温まり、すごくおいしいです」と笑顔の神村さん。 道の駅「ゆいゆい国頭」には、地元の洋菓子店とパン屋さんが共同開発した「クニガミドーナツ」や、日本一早い新茶といわれる「奥みどり」など、国頭村ならではの特産品が販売されているので、ぜひ立ち寄ってみてください。

自然を大切にするという心を育む

「『やんばるトレイルラン』は、初めての人でも走りやすいコースなのでたくさんの人に参加してほしいですね。植物を抜いたり、傷つけないといったマナー向上も大会の目的です。大会の翌日には希望者を募り、コース沿いに生えている外来種植物の駆除作業も行う予定です。自然を守るという心も育んでいけたらと思います」

「トレランの大会は、国頭村全体で盛り上げていきたいと思います。大会後に行われる後夜祭では地元の音楽好きな人たちがステージで演奏したり、村に伝わる芸能を披露したりと毎年盛り上がっています。地元でよく食べられる廃鶏を使った料理など振る舞われるので、競技はもちろん、国頭村の魅力もぜひ体感してほしいですね。会場近くには、特産品を販売している道の駅や飲食店、魅力的な観光施設もたくさんあります。走り終わった後はぜひ国頭村を巡ってください」

大会後の後夜祭の様子。写真提供:三上一行
左は地元ではよく食べられる血入りの豚汁、右は村民のソウルフード・廃鶏の炭焼き。 写真提供:三上一行

国頭村が一体となって盛り上げる世界自然遺産の森で開催されるトレイルランニング大会。今後は年に2つの大会が行われる予定です。自然を肌で感じ、その大切さを学ぶこともできる2大会にぜひ参加しみてはいかがでしょうか。