MARATHON

マラソン

尚巴志ハーフマラソン サイドストーリー

Column

尚巴志ハーフマラソンに出場経験もあるライターが見つけた
沿道にあふれるランナーを支える気持ち

ベテラン応援団の流儀

 第1回大会から欠かさず応援を続けてきたという民宿の女性と出会った。出走している家族や顔見知りのご近所さん、そして、宿泊客にはひときわ大声援を送っていた。横断幕を用意した年もあるが、今年はどうやら準備不足らしく、給水だけになってしまったことがなんとも残念そう。それでも、給水にはこだわり、グラスで水を差し出すのがこの民宿応援団の流儀。「紙コップだと走り過ぎるランナーにあわただしく手渡すことになってしまいますが、グラスならこの場で立ち止まって飲んでくれるので、ちゃんと目を見ながら応援できるんです。ランナーにとってはタイムが気になるとは思いますが、ひと呼吸ついて、ゴールまで走りきって欲しいですね」

ベテラン応援団の流儀ベテラン応援団の流儀

 宿泊客ランナーには、知念漁港に揚がった魚を夕食時に振る舞い、大会当日は会場まで送迎するなど、全面的にバックアップしているという。マラソン大会の常連や新顔など、ランナーとの輪が広がり、彼らへの応援が毎年楽しみで仕方がないようだ。

手作りのパーランクーを打ち鳴らして

 沿道で応援する子どもたちもお年寄りもみな揃いの段ボール製パーランクー(打太鼓)を手にしていた。毎年、段ボール業者が幼稚園や小学校、自治会に手作りキットを寄贈してくれるそうで、どうりで、パーランクーの応援が他のマラソン大会よりも印象に残っていたわけだ。リズミカルな太鼓の音がスタートからゴールまでコースをつなぎ、どこまでもこだまする。

手作りのパーランクーを打ち鳴らして手作りのパーランクーを打ち鳴らして

 「誰が一番大きな声で応援するか競争しよう」「今年はどんな仮装が来るかなぁ」と親子の会話は盛り上がり、応援を存分に楽しんでいる。大会に出場したことがあるお母さんは「走った時に一番苦しかった地点で応援したいと思って......」とパーランクーを手にコース終盤の踏ん張りどころでランナーを後押しした。

看護師の卵の心意気

看護師の卵の心意気

 救護班のボランティアスタッフとして働く専門学校生が元気よくランナーに声をかけていた。看護師を目指す女子生徒は医療系のボランティアをぜひやってみたいと今年初めて参加したという。1年生なのでテーピングや消毒法などまだまだ勉強中で、来年は学んだことを実践してみたいと早くも次大会のボランティアに意欲的だ。おきなわマラソンに出場したことのある女子生徒は、「沿道の人が消炎スプレーで手当てしてくれたおかげで走りきることができたので、今度は私が力になりたい」と目を輝かせた。

祭りの後もあちこちで

 レースが終わっても、ランナーへのおもてなしは続く。おたのしみステージでは、大会を主催する南城市のイメージキャラクター"なんじぃ"と小学生が「なんじぃマーチ」の踊りを披露していた。子どもたちはこの日のために練習を積み重ね、今では曲が始まると、自然と身体が動き出すまでに上達し、ハレの舞台を飾った。

祭りの後もあちこちで

 おたのしみステージがにぎやかに開催される中、会場をそっと後にした。コース上に設置していたキロ表示の看板を撤収する男性、完走証のラミネート機材を片付ける中学生の野球部男子、会場のゴミを分別するおばぁ、さとうきび畑の農道で交通規制の旗振りをするおじぃなど、あらゆる場所で、あらゆる人がそれぞれ自分の役割に徹していた。大会は支える人々の気持ちで満ちている。ランナーだけが主役ではない。ランナーを心待ちにして沿道で応援する人、黙々と働くボランティアスタッフや大会関係者......、みんなの思いが結集する。

祭りの後もあちこちで

 琉球王国の英雄の名を冠した大会名の通り、「新里坂を制した覇者」だけに待っている絶景に魅了され、大会を包む人々の温もりに"走り心地"のよさを感じて、ランナーはこの大会にすっかりのめり込んでしまう。尚巴志マラソンはクセになる大会なのだ。

(取材/西野美和子)