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本島中部のリゾート地 「恩納村」 を、穴場巡りと歴史ガイドで楽しくサイクリング!

私はママチャリですら何年も乗っていないサイクリング初心者。

2017年1月14日、15日「美ら島オキナワCentury Run 2017」が開催されたが、そのイベント本大会ではなく、今年から新設されたアフターサイクリングに参加してきた。コースは「やんばる・羽地周遊コース」と「リゾートエリアを廻る恩納村コース」の2種類で、それぞれ15Km程度のコース。私は恩納村コースを選んだ。

自転車は持っていなかったが、レンタルで簡単に手配できた。ただ、初めてのスポーツバイクへの挑戦。少しの擦り傷くらいならいいやくらいの気持ちで、アドベンチャーな気分を胸に、前日の夜は少し早く寝て、その日に備えた。

沖縄と言えどまだ肌寒い冬の朝。そわそわしているのはこれから訪れる楽しみの期待感からなのか、スポーツバイクと私はちゃんと仲良くできるかどうかの心配からなのか。

朝9時、県内外から約20名の参加者と共に、恩納村観光協会前を出発。

もしかしたら、置いてけぼりになって、各スポットで私待ちの状況になるのではと思っていて心配だったが、走り始めると、その不安はすぐに吹き飛んだ。
景色を眺める余裕があるくらい、ゆったりとしたスピードで走り出した。地元の農道を通ると、車が入れないような路地を冒険感覚でサイクリング。

バイクを走らせながら、浜風の強弱で海に近づいていくのが肌感覚で分かった。

最初の案内地は、国道から脇に入って、農道を抜けた先にあった。一旦自転車をおりて、ほら穴のような道を歩いて向かった。

亜熱帯の沖縄を感じさせる青々と生い茂る草木のアーチを踏み進んでいくと、その視線の先に光が差し込んできた。

思わず「これは…」とため息が漏れてしまうほど、きれいで壮大な景色が広がった。
ここは恩納村の隠れ名所「アポガマ」。
白い砂浜と透明度の高い青い海、長い歳月を掛けて浸食が繰り返されてできた洞窟がそびえ立っていて、幻想的な光景。

ガイドの恩納村観光協会の名城さんは「ここはサンセットもすごく素敵だし、浅瀬のところにはハートに見える窪みもあって、ロマンチックなんですよね。そして湾の向かい側の海は中級~上級者の向けのサーフィンの名所になっていますよ」と話してくれた。

地元の人だけが知る名所を知ることができた。つぎは友達を連れてきて、自慢したい場所だ。

「アポガマ」を出発し、約50m進んだ通り沿いに、またもや空洞が。石が重ねられた階段を下ると、その洞窟の中には舞台のような空間があった。

ここは昔、恩納区に伝わる「八月村芝居」の役を任された村民が、隠れて練習に使っていた場所。名はウドゥイガマ。洞窟の中を見上げると天井は高く、海からの風が洞窟の中を抜け、とても気持ちがいい。この場所を芝居の練習で使っていたというのもわかるような感じがした。

次のポイントまでは、舗装道と砂利道が入り混じる海岸沿いの道を進む。

沖縄屈指の観光スポットとして知られる万座毛(まんざもう)。その裏側を回りこむ、通称「裏万座毛」だ。ここを抜けると、万座毛の絶景につながる。

当時の琉球国王がこの景色を見て、「万人でも座れそうなほど広大で美しい」(草地は沖縄の方言で「毛」)と話したというエピソードから万座毛と呼ばれるようになったそうだ。

そして万座毛で参加者の皆さんと一緒に記念撮影。

見どころはまだまだつづく。
万座毛のそばにあるのは、18世紀の琉球王国に生きた、二大女流歌人の一人である恩納ナビーさんがつくった琉歌の歌碑。

「波の音も静まりなさい。風の音も静まりなさい。国王さまの芳しいお顔を拝みましょう」という意味の歌詞が刻まれていた。当時の琉球国王が万座毛に立ち寄った際に、即興で歌ったものだそうだ。

すると、ここでガイドの名城さんが恩納ナビーさんの歌を沖縄の三線と共に披露してくれた。

その歌声と三線のやさしい音色、その場の雰囲気に、参加者全員が聴き入ってしまった。こんなツアー初めてだ。一瞬で恩納村の虜になりそうだ。

この場所は、時代を超えてもなお、訪れる人が絶えないほど多くの人を魅了し続けている名所となっている。

万座毛を後にして、また走り出す。
曲がりくねった坂を下ると、「恩納酒造所」の看板が。

1949年に創業した恩納村では唯一の酒造所。沖縄の銘酒「萬座」を製造している。まろやかな口あたりで、地元を中心に根強い人気を誇る銘柄だ。

この酒造所を社長さんのガイドのもと、その製造過程を見学した。

工場の中に入ったとたんに、米と麹の甘い香りが立ち込める。目の前の窯の中では、泡盛の原料のアルコール発酵が進み、表面はブクブクっと気泡が立ち、まるで呼吸をしているかのよう。

出来たての泡盛を心の底から飲みたかったが、この後もサイクリングがあるので泣く泣く断念…。

ほかの参加者も飲みたかったのか、沖縄県外から参加した方のなかには、おみやげ用に買っている方も。

ここからは、ゴールまで悠々と。恩納村は東シナ海の海岸に沿って長く伸びている村で、海を横に見ながら、リゾート気分でサイクリング。

適度な傾斜のある坂を上り下り。上りではそれなりに足腰も堪えるが、下りではそのご褒美となる風を受ける。この心地良いインターバルを繰り返す。

途中、左右両側に田んぼと畑が広がる「安冨祖集落」を通って、今日のスタート地点「恩納村観光協会」に戻った。

到着すると、地元のお母さんたちが、郷土料理を作っておもてなししてくれた。

恩納村の特産であるもずくとアーサの天ぷらに、炊き込みご飯であるジューシー(炊き込みご飯)。青パパイヤを炒めたパパイヤチャンプルーなどが並ぶ。これが美味い!史跡巡りをしただけあって歴史のスパイスも味付けとして加わる。運動した後でお腹も空いたのか、参加者は皆一様におかわり。

「ここでせっかくなので曲を」と、一日中観光案内をしてくれた恩納村観光協会の名城さん。

実はこの方、三線奏者として芸大に進み、現在も三線講師を務めるなどして腕を鳴らす実力者。二度目の演奏のおもてなしに、参加者からは自然と拍手と歓喜が起こる。
「安里屋ユンタ」「芭蕉布」「タンチャメー」などの曲のリクエストに応え、その曲の歌詞の意味を丁寧に教えてくれたあとに、歌を聴かせてくれる。一つ一つの言葉が先人たちからの教訓だ。

奈良県から参加した、宇野裕史さん・和子さんご夫妻。国内外のサイクリングイベントに積極的に遠征している。

「地元の方だからこそ知っている穴場スポットを教えてもらえたのが良かった。アポガマ、あれは綺麗でしたね~。ローカルフードも頂き、芸能も楽しめ、共通の趣味を通じて地元の人とも触れ合うことができた。昨日(サイクリングイベント)も良かったのですが、今日のアフターサイクリングの方が楽しかったかもしれないですね(笑)また来年も参加したいです」と感想を話す。

外に出ると、程よくかいた汗で火照った肌を海風でクールダウン。
この約15kmのサイクリングの道のりは充実感に満たされる小旅行だった。

サイクリングは、風を受けながら、匂いを嗅ぎながら、そして会話を楽しみながら、ゆったりとしたリズムでその土地を楽しむことができる。そして、レンタカーでは通り過ぎてしまう場所や、ガイドブックにも紹介されていない地元の方のおもしろい裏話を聞けるのが、このアフターサイクリングの醍醐味である。ぜひ来年の「美ら島オキナワCentury Run」のアフターサイクリングもチェックして欲しい。

綺麗な海が見渡せるリゾート地として、この恩納村の魅力は十分に分かっているはずだったが、私は引きの魅力しか知らなかったんだと気づかされた。今回、サイクリングを通して、これまで味わえなかった自然、恩納村の魅力を五感すべて使って体感することができた。そして、地元の人々との交流が、歴史の時間旅行に導いてくれた。

この地域の底知れない魅力、そして自転車旅の魅力にはまっていきそうだ。
沖縄旅行の一つ手段として、この”サイクリング”を楽しんでみてはいかがだろうか。またひと味違う沖縄の表情をみることができるはずだ。